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  • Kyoto University・AIST
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2次元イメージングX線吸収分光法を開発し、リチウムイオン電池正極材料の反応分布を可視化

2016.12.1

研究成果のまとめ

X線吸収分光法はリチウムイオン電池正極材料の充電状態を観測する有効な手法であり、すでに電池作動条件でのオペランド測定が広く行われています。本研究では、電池の場所ごとにX線吸収分光測定が可能とするイメージング技術を開発し、立命館大学SRセンターにて、簡便に計測できる測定系を確立しました。リチウムイオン電池正極材料の解析に応用し、電極・電解質界面から反応が進行していく様子を直接的に確認しました。

本研究成果のポイント
  • マイクロメートルのオーダーで判別可能なリチウムイオン電池充電状態のイメージング測定を可能にした。
  • リチウムイオン電池正極の反応不均一現象を確認し、電極・電解質界面から反応が進行していく様子をとらえた。

概要

リチウムイオン電池の大型化への課題として、電池内部の反応不均一性があります。反応が不均一に進行すると、電池の利用率低減だけでなく、特定部位が急速に劣化したり、発熱による発火等安全性に悪影響を及ぼします。本研究では、リチウムイオン電池正極における反応不均一性を直接的に観測する手法を開発し、電極パラメータの一つである空隙率を対象にして、不均一反応現象の計測を行いました。測定は図1に示すような、比較的大きなサイズのX線を用いて、これを電極材料へ入射させ、透過するX線強度を2次元に配置された検出器で一度に計測する2次元イメージングX線吸収分光法を用いました。これにより、電極深さ方向の反応不均一現象をマイクロメートルオーダーで検出することができます。この手法を用いて、異なる空隙率の電極試料について、反応進行度を可視化したものが図2です。色の分布が均一なほど電極全体が反応に寄与しています。一方で、色の分布が顕著なものほど、反応が不均一に進行しています。本結果では電極の空隙率が小さいほど反応が不均一に進行していること、特に電極・電解質界面から反応が進行することが明らかになりました。これは電極内のイオン伝導が十分でなく、空隙率が小さくなるほど、その伝導経路が確保できなくなることを示しております。この結果は、大型のリチウムイオン電池設計に有益な情報を与えました。

成果公開情報
  • “Ionic Conduction in Lithium Ion Battery Composite Electrode Governs Cross-sectional Reaction Distribution”, Sci. Rep., 6, 26382 (2016).

図1 2次元イメージングX線吸収分光法の計測方法模式図

図2 空隙率を変化させたリチウムイオン電池正極断面の反応進行度。
上側が電解質側。下側が集電体側。赤色ほど、反応が進行している。