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本橋輝樹教授、小川哲志研究員他の研究成果がアメリカ化学会誌Chemistry of Materialsのカバーアートに採用されました。

新規メリライト型Fe/Co酸化物の合成と酸素発生反応触媒活性

概要

神奈川大学工学部 本橋輝樹 教授、小川哲志 研究員、荻野泰代 博士研究員、齋藤美和 教務技術職員、鈴木健太 研究員、高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所 米村雅雄 特別准教授、京都大学産官学連携本部 福永俊晴 特任教授、木内久雄 特定助教、東京大学工学系研究科 幾原雄一 教授、石川亮 特任准教授、仲山啓 特任研究員、北海道大学大学院理学研究科 土井貴弘 助教の研究グループは、非常に高い酸素発生反応 (OER) 触媒活性を示す新規のメリライト型Fe/Co酸化物を開発しました。

アルカリ電解液中で高いOER活性を示す電気化学触媒として、鉄とコバルトの複合化合物触媒が注目を集めています。Fe/Co複合触媒の高い活性の要因については理論計算などにより盛んに研究されている一方で、触媒の結晶構造に着目した触媒活性向上の試みは多くなされておりません。

本研究では、OER触媒において低配位数の遷移金属サイトの存在が活性向上に有利であると着想し、すべての遷移金属サイトが4配位四面体構造をもつ「メリライト型酸化物A2BC2O7」に注目しました。さらに、高活性が期待されるFe/Co複合組成の新物質A2Fe2−2xCoxGe1+xO7 (A = Sr, Ba) を開発し、中性子回折による結晶構造解析およびX線吸収分光法による遷移金属の価数決定を行いました。この化合物についてアルカリ電解液中でOER触媒活性評価を行ったところ、過去に報告されているペロブスカイト型やスピネル型酸化物触媒に比べてはるかに高活性であり、貴金属触媒RuO2と同等以上の性能を示すことが明らかになりました。反応後の触媒を電子顕微鏡観察したところ、結晶構造を維持した粒子表面に数十nmのアモルファス層が観測され、これが高OER活性相であると断定しました。このアモルファス層は、水酸化物イオンの吸着に優れる4配位サイト=“配位不飽和サイト”の存在により効率的に形成されたと考えられ、メリライト型化合物がOERなど吸着過程を経由する反応の触媒として有用であることが示されました。

本研究成果は、2020年6月22日に、米国化学会の国際学術誌「Chemistry of Materials」のオンライン版に掲載されました。さらに、本論文はカバーアートに採用されました。

 

 

【書誌情報】
S. Ogawa, Y. Ogino, M. Yonemura, T. Fukunaga, H. Kiuchi, K. Nakayama, R. Ishikawa, Y. Ikuhara, Y. Doi, K. Suzuki, M. Saito, and T. Motohashi
Synthesis of Novel Melilite-Type Iron/Cobalt Oxides and Their Oxygen Evolution Reaction Electrocatalytic Activity
Chem. Mater. 2020, 32, 6847-6854. [selected as the Cover article]
DOI: 10.1021/acs.chemmater.0c01010