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  • 京都大学・産業技術総合研究所
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高見特定准教授他の研究成果がAPL Materialsの"Featured"に選ばれ、"Science Highlight"にて特集されました。

新奇な4 元系酸フッ化物正極における充放電を実証
―革新型蓄電池の実現へ向けて―

 

概要

京都大学産官学連携本部 高見剛 特定准教授、河原克⺒ 技術補佐員、福永俊晴 特任教授、安部武志 工学研究科教授、高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所 齊藤高志 特任准教授、神山崇 教授の研究グループは、新奇な4元系酸フッ化物Bi0.7Fe1.3O1.5F1.7 正極において、フッ素イオンを伝導種とした充放電を実証しました。

既存のリチウムイオン電池(LIB)を凌ぐ蓄電池として、フッ化物イオン電池が注目されています。しかし、LIB正極を構成する酸化物とは異なり、(酸)フッ化物自体の数が少なく、その合成技術も未確立です。このこともあり、金属フッ化物(2元系)をモデル電極とした高容量化と機構解明に取り組まれていますが、多元系で新物質を開拓することも重要です。

本研究では、フッ素化剤を用いたnon-topotactic反応により、新物質Bi0.7Fe1.3O1.5F1.7を合成しました。中性子回折により、結晶構造の精密化に加え、伝導種のフッ素の含有量と原子位置を決定しました。この物質を正極、Pbを対極として、サイクリックボルタンメトリー測定を行ったところ、酸化・還元ピークを観測しました。また、全固体セルにおける放電容量は360 mAh/g となり、高い値を達成しました。磁化測定により、充放電に伴うPb 対極のフッ素化・脱フッ素化の割合を定量評価しました。X線蛍光分析およびX線回折により、放電に伴うBi への相転移とFeの価数減少を明らかにしました。充放電時の不可逆性の克服等課題は残りますが、多元系(酸)フッ化物開発への新しい展開を生み出すことが期待されます。また、モデル電極の2元系金属フッ化物の知見と合わせることで、革新的な高容量蓄電池の開発を加速させる成果といえます。

本研究成果は、2020年5月4日に、米国物理協会の国際雑誌「APL Materials」のオンライン版に掲載されました。さらに、本論文は「Featured」(注目論文)に選ばれ、米国物理協会から最も顕著な研究成果として「Science Highlight」(Scilight)にて特集されました。

 

 

【書誌情報】
T. Takami, T. Saito, T. Kamiyama, K. Kawahara, T. Fukunaga, and T. Abe
A new Bi0.7Fe1.3O1.5F1.7 phase: crystal structure, magnetic properties, and cathode performance in fluoride-ion batteries
APL Materials 8, 051103 (2020). [selected as Featured and Science Highlight]
DOI: 10.1063/5.0005817

【Scilight 情報】
Ternary oxyfluoride shows promise for fluoride-ion batteries (by Meeri Kim)
Scilight 2020, 191104 (2020)
DOI: 10.1063/10.0001211